◆ものがたり
森に冬がやってきました。
あたりはもう真っ白な雪が積もり始めています。
少女は、お母さんに作ってもらったばかりの
赤いかわいいコートを着て、
さくさくと楽しそうにおさんぽをしています。
少女のコートには金色の金具に七色のビーズを
散りばめたとてもきれいな大きなボタンが3つついています。
木々の間から、
お日様がちらちらと銀色の光をふりまくと、
まるでそれに答えるように少女のボタンが
その光をいくつもの色に変えてキラキラ、キラキラと
雪の上に虹色の影を映すのでした。
けれど、どうしたことでしょう。
いつのまにかそのまんなかのボタンが
ひとつなくなっているのです。
気がつくとあたりは真っ白い雪ばかり。
落としてしまったボタンは、もう見つかりませんでした。
そのまま森は深い雪に包まれ、長い冬を迎えました。
少女はもうボタンを探しに行くことはできませんでした。
そうしてずいぶんたった頃、
ようやく森に浅い春が訪れます。
しだいに雪が消えてゆく森の中で
あのボタンはどうなったのでしょう。
どうしましょう
私のコートのボタンがひとつ
どこに行ってしまったの?
お気に入りのまっ赤なコート
お母さんに作ってもらった
かわいいコート
虹色に光る大きなボタンが三つ
けれど ひとつ足りない
どうしましょう