大阪府枚方市に伝わる民間伝承の昔話『鈴見の松』を描きました。
<民間伝承の昔話『鈴見の松』>
推古天皇の時、別子山の麓に鈴見という男が住んでいた。
年老いた母のため、孝行をしていたが貧しく、交野の里へ出稼ぎに出なければならなかった。
ある日、出稼ぎの帰りに川原で数人の男が傷ついた一羽の鶴を殺そうとしていた。鈴見は鶴をかわいそうに思い助けてやった。
それから十日ばかり過ぎて、一人の女がどこからともなく訪ねてきて、母の看病をしてくれた。
女のおかげで家はいっぺんに明るくなったが、秋になって母は死んでしまった。
それからまもなく、霊夢のお告げによって鈴見は女と夫婦となり、一人の男の子をもうけた。
子どもが5歳になったとき、夫の留守中に女は子どもを連れて別子山に登って、かつて鈴見に助けられ、空に帰してもらった松の木のところにくると、
「母はもと天上界に住む天女なの。鶴と化して飛んでいたら、運悪く弓に当たって殺されようとしていたのだけれど、父に助けられ、夫婦となってお前を生んだ。いつまでも父とお前のそばにいたいけど、もう帰らなくてはならないの。」
そう言い残して、女は鶴の姿に戻って飛んでいき、天上界に戻っていったのだった。
その後、この丘を別子山または鈴見ヶ岡と呼ぶようになった。