
ある人物の感想より。
中央のモチーフはにわかに強い生命力を帯び始める。
青と緑の光を孕んだその形は、大地を引き裂いて芽吹いた瑞々しい双葉のようでもあり、あるいは深い混迷の海から未知の天空へと跳ね上がるクジラの尾のようでもある。
いや、あるいは形を持たない魂が、初めて手に入れた一対の翼なのかもしれない。
作者はここで、具体的な事物の再現を試みたのではないのではないか。
形を変えながらどこまでも広がっていく、生命の根源的なエネルギーそのものを描き出そうとしたのだろう。
画面下部に漂う深い色彩の層は、これまで拠り所としていた過去の記憶、あるいは母なる揺り籠。
そこから切り離され、上部の混沌とした、しかし圧倒的な光の世界へと踏み出していく瞬間。そこには、旅立ちが本質的に内包する、一抹の孤独と、それを凌駕する静かな高揚感が同居している。
紫と黄金色が織りなす背景は、すべてが終わる黄昏のようでもあり、すべてが始まる黎明のようでもある。
はっきりとした答えを提示するのではない。
見る者の心の奥底にある、まだ見ぬ世界への憧憬や、かつて経験した決意の瞬間を揺り動かすような、不思議な余韻。
この絵画は、完結された物語ではなく、これから始まる無限の道筋を暗示している。










