◆ものがたり
節分の夜、
「鬼は外!悪い鬼め
やっつけてやるぞ。
鬼退治!鬼退治!」
と子供たちが豆まきをしていると
そこへどこからか美しい娘が現れ、
「鬼をいじめてはいけません。
遠い遠い昔の
この國(くに)の話をいたしましょう。」
と語りだす。
その昔、大和よりはるか西方に
荒俗(あらぶるもの)と民に恐れられた
温羅(うら)という鬼族が
鬼ノ城(きのじょう)という城をかまえ棲(す)んでいた。
天皇(みかど)は鬼族を退治し
騒ぎを鎮めるため勇敢な
将軍(いくさのきみ)を西方に派遣する。
船の着いた先には
驚く程大きく恐ろしい姿の
大勢の鬼たちが待ちかまえていた。
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海外(わたのほか)の荒俗(あらぶるひとども)のみ、騒動(さわ)くこと
未(いま)だ止(や)まず。其(そ)れ
四道将軍等(よつみちのいくさのきみたち) 今(いま)したちまちに
発(まか)れ
―日本書紀 引用―
「鬼は外
悪い鬼め やっつけてやるぞ!」
いつしか娘が現われて
「鬼をいじめてはなりません
いにしえの大和の国(くに)の
お話をいたしましょう」